ちょうど1年前まで、盛岡に住んでいました。
都会の喧噪に身を置いていると、わずか1年半だった楽しい岩手での生活が、懐かしく感じられます。
そして映画をみたり、本を読んだりした時に、いわての景色や言葉が作品に登場すると、思わず嬉しくなるものです。
先日久しぶりに山田洋次監督の映画「息子」をみました。
東京に住む永瀬正敏演じる息子が、恋人役の和久井映見と婚約したことに喜んだ父の三国連太郎。
ひとり暮らしをしている田舎は、軽米でした。
東京からの帰り道。新幹線から在来線、バスを乗り継いで家に戻った三国を待っていたのは、大きな農家の玄関前に積もった一面の雪。
雪をかき分けようやく母屋にたどり着き、真っ暗の部屋に火を灯すと、出稼ぎから帰って家族に迎えられたころの場面を思い出します。
雪深い東北に暮らす人々の人生や老人の孤独、その思いが凝縮されたシーンです。
ちなみに私は、講演会を聴くために、二戸・軽米に足を伸ばしたことがあります。
三国が東京に向かう際は、娘に新幹線開業前の二戸駅まで車で送ってもらうシーンがありました。
駅前の様子が懐かしく感じました。
あのあたりの風景は、どこか重厚な感じがします。
土の重み、人々が暮らした営みの重みが、そう感じさせてくれるのかもしれません。
岩手を舞台にした山田監督の作品では、ほかに「同胞(はらから)」があります。
岩手県松尾村(現八幡平市)の青年会がミュージカルの公演をするストーリーです。
八幡平や岩手山、松尾銅山の跡地などが随所に映ります。
寅さんシリーズで全国各地を回った山田監督。
彼がこの2つの作品で、なぜ舞台に岩手を選んだのか。とても興味深いところです。